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憲法

不利益な供述の強要禁止等

[問題]

憲法38条に規定されている自己に不利益な供述、自白の証拠能力及び証明力について述べなさい。

  1. 自己に不利益な供述
  2. (1)憲法の保障

    憲法38条1項は、自己に不利益な供述を強要されない旨を規定し、黙秘権について保障している。

    (2)趣旨

    自己に不利益な供述を強要することは、供述を強要する過程で人権侵害が生じやすいことなどから認められた権利である。

    (3)黙秘権の内容

    ア 「自己に不利益な供述」とは、本人の刑事責任に関する不利益な供述、すなわち、有罪判決の基礎となる事実に関する供述、及び量刑上不利益となる事実に関する供述をいう。自白は、自己の犯罪事実の全部又はその重要部分を認める供述であることから、「自己に不利益な供述」に含まれる。

    イ 「強要されない」とは、拷問を加えるなどの直接的な強制の禁止、及び供述拒否に対し法律上あるいは事実上の不利益を課すという間接的な強制の禁止を意味している。

    (4)行政手続との関係

    黙秘権の保障は、純然たる刑事手続ばかりでなく、行政手続であっても、実質上、刑事責任追及のための資料収集に直接結び付く作用を一般的に有するときには、認められる場合がある(最判昭47.11.22)

  3. 自白の証拠能力
  4. (1)自白の排除法則

    憲法38条2項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、証拠とすることができない旨を規定している。判例は、任意性に疑いのある供述の証拠能力も否定するものであると示している(最判昭45.11.25)

    (2)趣旨

    捜査機関による供述の強要といった違法・不当な圧迫を排除すること、任意性を欠く自白は虚偽を含んでいる可能性が強いことから認められた権利である。

  5. 自白の証明力
  6. (1)自白の補強法則

    憲法38条3項は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない旨を規定し、有罪の認定には自白以外の証拠によって補強されることを要求している。

    (2)趣旨

    自白偏重を防止し、黙秘権の保障を確実なものとするために認められた権利である。

    (3)共犯者の自白

    判例は、共犯者の自白を唯一の証拠として被告人を有罪とすることができるとしている(最判昭33.5.28)