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刑事訴訟法

任意捜査の原則と捜査手法

[問題]

任意捜査の原則について説明し、刑訴法に根拠を求めることができる任意手段による警察の捜査手法について述べなさい。

  1. 基本的人権と捜査手続の関係
  2. 捜査等の刑事手続において、人権を侵害するおそれがあることに鑑み、憲法では、法律の手続によらなければ生命若しくは自由を奪われないなどとする「法定手続の保障」、身柄拘束に対する「令状主義」を定めている。

  3. 任意捜査の意義と法的根拠
  4. 任意捜査とは、強制捜査に当たらない手段による捜査をいう。任意捜査は、「捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる」との刑訴法197条1項の規定が法的根拠となる。

  5. 任意捜査の原則
  6. 「任意捜査の原則」とは、逮捕の要件が備わっているなど、強制捜査が可能な場合であっても、任意捜査によって捜査の目的を達成し得る場合には、任意捜査を優先するべきであるとする原則をいう。

  7. 刑訴法に根拠を置く任意捜査手法
  8. (1)公務所等に対する照会(刑訴法197条2項)

    官公庁、金融機関、保険会社等の部外団体に対して行ういわゆる捜査関係事項照会は、捜査資料の収集・裏付け捜査等を行う上で、欠くことのできない任意手段による捜査手続である。

    (2)被疑者の出頭要求等(刑訴法198条1項)

    司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。捜査を目的とする任意同行も、本条項を根拠として行うことができる。

    (3)参考人の出頭要求等(刑訴法223条1項)

    司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者(被害者、目撃者、参考人)の出頭を求め、これを取り調べることができる。

    (4)鑑定、通訳、翻訳の嘱託(刑訴法223条1項)

    司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者に鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。

    (5)領置(刑訴法221条)

    司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物を領置することができる。

    (6)その他の任意捜査(刑訴法197条1項)

    刑訴法197条1項の「必要な取調」には、広く捜査のため必要とされる一切の手段・方法を含むと解されており、次のような任意捜査の法的根拠ともなる。

    ア 聞込み、尾行、密行、張込み(犯捜規101条)

    イ 実況見分(犯捜規105条、106条)

    ウ 写真撮影、発信場所探索(逆探知)、ポリグラフ検査等