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行政法

泥酔者が保護を拒否した場合の措置

[問題]

A巡査部長らは、真冬の深夜、路上に寝込んでいる泥酔した男を保護しようとしたところ、男は「放っておいてくれ」と言って、その場で、寝込んでしまった。この場合に、A巡査部長らがとるべき措置について述べなさい。

  1. 結論
  2. A巡査部長らは、男を強制的に保護することができる。

  3. 理由
  4. 警職法3条1項1号規定の保護の要件に当たる。

  5. 保護
  6. 警職法3条の保護とは、精神錯乱者、迷い子等に該当することが、周囲の事情等から合理的に判断して明らかで、応急の救護を要すると信じるに足りる、相当な理由のある者について、取りあえず、警察署、病院等の適当な場所に収容するなどし、応急の措置をとることをいう。

  7. 警職法3条に基づく保護の種別
  8. (1)警職法3条1項1号(即時強制措置)

    ア 対象者

    1号保護の対象者は、精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼすおそれのある者である。

    ① 精神錯乱には、精神医学上の精神病の発症のほか、社会通念上精神が正常ではない状態、例えば、強度のヒステリー状態や、覚醒剤等の使用による一時的な錯乱状態等も含まれる。

    ② 泥酔とは、アルコールの影響により、意識が混濁し、正常な判断能力を欠いている状態をいう。いわゆる「酩酊状態」は、泥酔には該当しない。

    イ 保護の態様等

    1号保護は、保護対象者に自傷他害のおそれがある場合にとる措置であり、即時強制措置として、本人の意思にかかわらず、強制手段をもって保護することができる。ただし、やむを得ない状況にあること、及び強制手段が必要最小限度であることを要する。

    (2)警職法3条1項2号(任意活動)

    ア 対象者

    2号保護の対象者は、迷い子、病人、負傷者等で、適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者である。

    イ 保護の態様等

    2号保護は、任意活動によるものであり、条文で「本人がこれを拒んだ場合を除く」とされていることから、保護に際し、被保護者本人の承諾が必要となる。なお、被保護者が保護を拒絶する場合であっても、状況を客観的に判断した真意からの意思表示でなければ、認めることはできない。

  9. 設問に対する検討
  10. 男は泥酔者であり、このまま放置すれば、生命、身体に危害が及ぶおそれが高く、応急の救護が必要であるとの判断は相当なものである。A巡査部長らは、警職法3条1項1号を根拠に、男を強制的に保護することができる。