A警部が勤務中、窃盗で現行犯逮捕した被疑者甲の取調べをB警部補が実施していたところ、押し掛け弁護士Cが「甲と接見したい」と要求してきた。A警部のとるべき措置について述べなさい。
身体の拘束を受けている被告人・被疑者が、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と立会人なくして接見し、又は書類・物の授受をすることができる権利をいう(刑訴法39条1項)。
(1)弁護人とは、弁護人選任権者から依頼を受け、これを承諾し、弁護人選任手続を完了した者をいう。
(2)弁護人となろうとする者とは、弁護人選任権者から依頼を受けたが、いまだ捜査機関等に対し選任届を提出しておらず、選任手続を完了していない者をいう。
被告人・被疑者本人、及び被告人・被疑者の法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹は、独立して弁護人を選任することができる(刑訴法30条)。
例えば、新聞等で事件を知った弁護士が、弁護人選任権者の意思に関係なく弁護人になろうとして警察署に来た場合や、弁護人選任権者以外の者から弁護の依頼を受けた弁護士が警察署に来た場合等は、資格のある弁護士であっても弁護人になろうとする者には該当しない。
接見指定は、被疑者の防御権と捜査のための必要性との調和を図るための規定である。
(1)法令により、被疑者の逃亡、罪証隠滅又は戒護に支障のある物の授受を防止するため、必要な措置ができるとされている(刑訴法39条2項)。
(2)検察官、検察事務官又は司法警察職員は、「捜査のため必要があるとき」は、公訴の提起前に限り弁護人等との接見、物の授受について、その日時・場所及び時間を指定できる(刑訴法39条3項)。
(3)「捜査のため必要があるとき」とは、捜査の中断による支障が顕著であることを意味し、この場合、接見指定ができる(最判昭53.7.10)。具体的には、現に取調べ等が行われている場合又はそれが間近い時に行われる確実な予定がある場合をいう(最判平3.5.10)。
C弁護士は押し掛け弁護士であり、「弁護人となろうとする者」には当たらないが、被疑者甲にC弁護士が接見を求めている旨を伝えて意思確認を行う。
被疑者甲が、弁護人として選任する意思を明らかにしたとき、又は「一度話がしたい」旨を述べたときは、C弁護士を「弁護人となろうとする者」として取り扱い、被疑者甲と接見させる。
逆に、被疑者甲が「選任しない」旨を述べて選任の意思がない場合は、接見を行わせない。