いわゆる暴力団排除条例において、暴力団の利益になるようなときに公の施設の利用を許可しないことができるとされた規定は、憲法21条に定める集会・結社の自由に反しないかについて述べなさい。
(1)憲法21条1項の規定
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障すると規定している。
(2)集会の自由
集会とは、多数人が共通の目的のために特定の場所に集合することをいう。集会の自由には、集会を主催する自由のほか、集会に参加する・参加しない自由等が含まれる。
(3)結社の自由
結社とは、多数人が共通の目的のために継続的に結合することをいう。結社の自由には、団体を結成する自由のほか、団体に加入する・加入しない自由等が含まれる。
(4)集会と結社の異同
いずれも、個人の自由だけでなく、集団としての意思形成や集団としての行動も集会・結社の自由として保障される。両者の違いは、継続性の有無にある。
集会・結社の自由は精神的自由権に含まれ、個人の内面にとどまる限り絶対的に保障される。大衆が自己の思想や意見を表明する手段であり、民主制に必要不可欠の自由であることから、人権の中でも優越的地位を占める。
集会・結社は集団であるため、他の利益との衝突の可能性も高く、公共の福祉により制約され得る(憲法13条)。
集会の自由は、公共の場所での集団による行動を伴うことがある。この場合、交通秩序に影響を及ぼしたり、他の利用者の利益と衝突したりする可能性があり、他の国民の権利・自由との調整が必要となる。
結社の自由も公共の福祉による制約を受け、犯罪を行うことや、憲法秩序を暴力によって破壊することを目的とする結社は、保障の対象とはならない。
(1)集会の自由との関係
暴力団の集会が行われ、公の施設が暴力団の活動に利用されることは、暴力団の利益になるといえ、公の秩序を乱すおそれがあると認められる。この場合、公の施設における集会の自由の保障よりも、公の施設で集会が開かれることで、公共の安全が損なわれる危険を回避し防止する必要性が優越するといえる。よって、当該規定は合憲である(最判平7.3.7)。
(2)結社の自由との関係
同条例の内容が、暴力団員による不当な行為の防止を目的とするものにすぎない場合には、結社の自由を不当に侵害するものではなく、合憲である。