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刑事訴訟法

捜索・差押えにおける必要な処分

[問題]

捜索・差押えにおける必要な処分について述べなさい。

  1. 意義及び法的根拠
  2. 刑訴法111条1項は、「差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる」と規定している。

    この規定は、裁判所が行う手続に関する規定であるが、刑訴法222条1項により、捜査機関が行う場合に準用されている。

  3. 趣旨
  4. 現実的な要請上、捜索・差押えの執行を実効あるものにするための処分行為を、必要かつ妥当な範囲で許容したものである。

  5. 方法
  6. 条文上明記されている錠を外す行為や封を開く行為は例示であり、規定の態様に限られない。

  7. 必要な処分の例
  8. (1)着手時における必要な処分

    玄関の錠又は鍵の破壊、走行している自動車の停止等である。

    (2)執行中における必要な処分

    金庫、ロッカー等の施錠の破壊、薬物の予備試験、コンピューターの使用、携帯電話の使用の禁止等である。

    (3)押収後における必要な処分

    写真等のフィルムの現像、封緘信書の開封、押収した携帯電話内データのコンピューターへの読み込み、コピー等である。

  9. 必要な処分の限界
  10. 必要な処分は、捜索・差押えの目的を達するために必要最小限度の範囲内において許容される。

    (1)物の破壊

    一般的に必要な処分に物の破壊も含まれるが、権利侵害の程度が高いことから、他に方法がないなど、やむを得ない場合に限って許される。破壊の方法、程度も必要最小限度にとどめることが求められる。

    (2)被処分者への強制

    被処分者に、消極的な受忍義務を課すにすぎず、積極的な作為義務を課してはならない。

    例えば、押収した自動車を被処分者に強制して運転させ、保管場所まで運ばせることや、捜索場所にあるパソコンを、被処分者に強制して操作させること等はできない。