警察活動上の原理を踏まえ、民事問題への対応について述べなさい。
(1)法治主義に基づく原則
ア 警察活動における権限行使と法令の根拠
警察活動は、全て法令の根拠を必要とする。強制手段による権限行使に法律の根拠が必要となることはもちろん、職権行使の具体的な要件や手段・方法を定めた明文規定のない任意手段であっても、警察法2条1項を根拠としている。
イ 警察活動の目的と権限行使
警察活動は、警察法2条1項が厳格に掲げる責務の範囲に限られる。また、個々の警察官の権限は、その根拠となる法令の立法目的の範囲内で権限行使ができるにとどまる。
(2)基本的人権尊重主義に基づく原則
憲法13条は、全ての国民に対する個人としての尊重について、警察法2条2項は、警察権の濫用による個人の権利等の干渉禁止について規定している。このため、警察権の行使に際し、必要な限度を超えて私生活に深く干渉する、プライバシーを侵害するような活動は許されない。ただし、放置できない配偶者に対する暴力や児童虐待等から人権を擁護し、公共の福祉を図る観点から、警察権の介入が必要となる場合がある。
民事紛争の解決は、「私法上の法律関係は、個々人の自由意思により規律させる」とする「私的自治の原則」により、警察の責務の範囲外となる。しかし、相談業務等で受ける内容に、犯罪の存在を認めることができる場合は、捜査着手の要否を判断しなければならない。警察権が、私法上の権利行使や契約関係に介入することは、原則として許されないが、それが個人の自由な意思決定を妨げ、あるいは公共の秩序を害する場合、これに対応しないことは警察の責務に違背することとなる。
(1)私法上の権利行使が犯罪を構成する場合
私法上の権利を有する債権者等が、暴力的な取立て等を行う場合は、恐喝等の犯罪を構成し、犯罪捜査の対象となる。
(2)取締法規に違反する契約がある場合
一定の利率を超過する金銭の消費貸借契約や、所定の方式に従わない売買契約に関する私人間の契約は、犯罪捜査の対象となる。
(3)暴力的要求行為等が関係する場合
暴力団による暴力的要求行為等に対しては、たとえ犯罪に該当しない場合であっても、警察活動による援助が認められる。