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刑事訴訟法

別事件に関する弁護人への通知

[問題]

A事件で逮捕・勾留された甲は、その勾留中にB事件で再逮捕されることになった。甲には、A事件についての弁護人Xが選任されていたが、B事件についても弁護人Xを選任したい旨の申出があった。この場合、その旨の弁護人Xへの通知の要否について述べなさい。

  1. 結論
  2. 別事件に関する選任の申出である以上、弁護人Xに別事件での選任に関する通知を行う必要がある。

  3. 被疑者の弁護人選任権
  4. 被疑者は、いつでも弁護人を選任することができる(刑訴法30条1項)。

    (1)被疑者

    「被疑者」とは、捜査機関により犯罪の嫌疑を受けている者であって、捜査機関が具体的犯罪について嫌疑があると認めて捜査を開始したときから、公訴提起に至るまでの間の者をいう。

    (2)いつでも

    「いつでも」とは、起訴の前後・裁判の審級・身柄拘束の有無に関係なく、弁護人を選任することができることを意味している。

    (3)弁護人

    特別弁護人選任の場合を除いて、弁護人は、弁護士の中から選任しなければならない(刑訴法31条)。ここにいう「弁護士」とは、弁護士法に定める資格を有し、かつ、弁護士名簿に登録されている者をいう。

  5. 身柄拘束中の被疑者の弁護人選任権
  6. (1)意義

    被疑者は、弁護人の選任を申し出ることができる。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない(刑訴法78条1項)。

    (2)被疑者から選任申出があった場合

    身柄拘束を受けた被疑者から、弁護人選任の申出を受けた場合には、直ちに、当該弁護士等に通知しなければならない。

    (3)弁護人があるとき

    身柄拘束の理由となった事件に関して、弁護人を既に選任しているときをいうと解する。

  7. 設問に対する検討
  8. 甲は、A事件について弁護人Xを選任しているが、B事件についても弁護人Xを選任したい旨の申出をしている。弁護人は同一であるが、身柄拘束の理由となった事件とは別事件についての選任である以上、刑訴法78条1項において例外とされている「弁護人があるとき」に当たらない。よって、弁護人Xに対してその旨の通知をしなければならない。