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刑事訴訟法

被疑者勾留

[問題]

被疑者勾留の要件とその判断基準について述べなさい。

  1. 被疑者勾留の意義
  2. 被疑者勾留とは、裁判官の発付する勾留状により、被疑者の身柄を留置施設等に拘束する強制処分をいう(刑訴法207条1項・60条1項)。被疑者の勾留を請求できるのは検察官である(刑訴法204条1項)。

  3. 被疑者勾留の要件
  4. 被疑者を勾留するには、形式的要件として、逮捕が先行していること(逮捕前置主義)が必要であり、在宅のまま勾留請求することはできない。

    これに対し、実質的要件としては次の2つが要件となる。

    (1)勾留の理由があること

    (2)勾留の必要性があること

  5. 勾留の理由
  6. (1)被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること

    逮捕後に更に捜査を進めた上、長期の身柄拘束を求めるものであることから、嫌疑の程度は逮捕におけるものよりも高度のものが求められる。

    (2)次のいづれかの法定要件に該当すること

    ア 定まった住居を有しないこと

    住居や居所を持たないことであり、住居があっても、家出をしている者、簡易宿泊所等を転々と泊まり歩いている者もこれに含まれる。

    イ 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること

    共犯者との通謀、事件関係者に対する働き掛け、証拠物件の隠匿・破壊等、事案ごとの様々な要素が考えられるが、具体的な事実に基づく蓋然性がなければならない。

    ウ 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること

    住居、家族、年齢、職業、身柄引受人等の生活安定要因の有無、事件の罪質・軽重、弁解、前科前歴、余罪、背後にある関係者・組織等、刑事処罰回避を疑わせる要因の有無を総合的に判断する。

  7. 勾留の必要性
  8. 被疑者の勾留請求を受けた裁判官は、勾留の必要がない場合に勾留取消しができること(刑訴法87条1項)等から、裁判官に勾留の必要性に関する審査権があると解されている。