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行政法

任意同行

[問題]

任意同行の意義・法的根拠・要件について述べなさい。

  1. 任意同行の意義
  2. 職務質問を行うに当たり、その対象者を発見した場所で質問をすることが適切でない場合に、相手方の承諾を得て付近の警察署や交番等へ同行を求めることをいう。

  3. 任意同行の法的根拠
  4. (1)職務質問の対象者に対し、警察署等へ同行を求める場合は、警職法2条2項を根拠として行う。

    (2)警察の責務を達成するために必要な限度で同行を求める場合は、警察法2条1項を根拠として行う。

    (3)捜査上の必要から任意取調べを行うため、警察施設等に出頭を求める場合は、刑訴法198条1項を根拠として行う。

  5. 任意同行の対象者
  6. (1)犯人的立場にあると疑われる挙動不審者

    (2)第三者的立場にある者

  7. 任意同行の要件
  8. (1)警職法2条2項を根拠とする場合

    ア 本人に対して不利であること

    職務質問を行った場所が公共の場所で本人の名誉を傷つけるような場合や、戸外で風雨に本人をさらしている場合等をいう。

    イ 交通の妨害になること

    その場での職務質問が車両等の通行の妨害となることをいい、これには野次馬等のい集も含まれる。

    (2)警職法2条2項の要件を欠く場合

    ① 目的が正当であること、② 目的達成のため客観的に必要と認められること、③ 社会通念上相当と認められることを要件として、警察法2条1項を根拠に任意同行を行うことができると解される。

    また、犯罪捜査について必要があれば、刑訴法198条1項を根拠として任意同行を求めることができる。

  9. 任意同行の方法
  10. 原則として、相手方の承諾が必要とされている。

  11. 任意同行の際の有形力の行使
  12. 具体的状況に応じた社会通念上妥当な範囲内で、一時的に有形力を行使できる。行使する有形力は、① 特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらないこと、② 緊急性等も考慮して具体的状況の下で相当と認められる限度であることに該当するものでなければならない(最決昭51.3.16)