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憲法

公務員の憲法上の地位

[問題]

公務員の憲法上の地位について述べなさい。

  1. 公務員の憲法上の地位
  2. (1)人権享有主体

    公務員は、日本国民であることから、憲法の人権享有主体としての地位を有する。したがって、公務員にも憲法上の人権保障が及ぶ。

    (2)全体の奉仕者

    憲法上、公務員は「全体の奉仕者」という地位を有する(憲法15条2項)。これは、公務員の使用者は国民全体であって、その職務は公共性を有し、公務員が一部の国民の私的利益に仕えることとなってはならないことを意味している。

    公務員は、憲法の人権享有主体であると同時に「全体の奉仕者」という地位を有していることから、一般国民とは異なる取扱いを受ける場合がある。

  3. 公務員の人権制約の内容
  4. (1)労働基本権の制限

    憲法では、労働基本権が保障されている(憲法28条)。具体的には、① 団結権、② 団体交渉権、③ 争議権である。公務員は、その職務に応じて労働基本権が制限されている。特に警察官は、団結権、団体交渉権及び争議権の全てが保障されていない(地公法52条5項)。

    公務員の労働基本権に対する制限の合憲性については、公務員の地位の特殊性と職務の公共性から、これを根拠として公務員の労働基本権に対し必要やむを得ない限度の制限を加えることは、憲法に反するものではないとされている(最判昭48.4.25)

    (2)政治活動の自由の制限

    政治活動は、何らかの政治的な主張を外部に表明することを伴うため、政治活動の自由は、表現の自由の一内容として保障される。地公法は、公務員の一定の政治的行為を禁止して、その政治活動の自由を制限している(地公法36条)。

    政治活動の自由に対する制限の合憲性については、行政の政治的中立性、及びそれに対する国民の信頼を確保するために、必要かつ合理的な範囲の制限であって、憲法に反するものではないとされている(最判昭49.11.6)

  5. 公務員の憲法尊重擁護義務
  6. 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負う(憲法99条)。

    各種法律は、憲法尊重擁護義務について定めている憲法の精神に基づいて、公務員が憲法の尊重擁護の宣誓をすることについて規定している。警察法3条では、警察職員について「日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする」との規定を設けている。